出演 平沢進
イベント後配られたお馴染みのポストカード
第壱幕 運命、感じる
やっと秋らしくなって肌寒い中、P-MODELの秋葉原のインストアイベントに行って来た。12時丁度に会場前に着くと、すでにイ ベント参加者とおぼしき人々が見受けられた。参加券と整理券の引き替えは、抽選だった。70番をゲット。丁度真ん中ぐらい。12:30に整列が始まるとい うことなので、その時間まで、いつも行くMyアキバ巡回コースの一部を回ることにした。
12:30に再びソフトワン前に戻ると、結構な数の人が集まっている。こちらから一方的に見知っている常連の追っかけさん(?)も もちろんいるのだが、秋葉原という場所が反映されてか、幾分人種がいつもと違って、若い男性が多かったようだ。並んでるとき、なぜか、ある係の女性と何度 も目が合ってしまって、目のやり場に困った。これは余談。イベント開始13:00の10分ぐらい前になると、きっちりと番号順に整列し直され、順番に入場 となった。
イベント会場は、店の二階部分の売場を出たがらんとした別室。こういったイベント専用に設けられた部屋のようである。学校の教室一 つ分くらいの広さ。イベント前は、あの狭い売り場のどこでやるのかと疑問に思っていたのだが、こういうことだったのか。部屋を見回すと、声優やらアイドル やらの昔行われたイベントを記念したサイン入りパネルが壁中にたくさん張ってある。平沢進ソロアルバム「救済の技法」発売記念イベント時のパネルもちゃん とあった。前3列ぐらいの人は椅子に着席。あとは順に立ち見である。右前方にプロジェクターと大型のスクリーンがある。クリップを映し出すためのものだ。 ワンステップ高くなっているステージの中央に平沢さん用の椅子とマイク、左手のステージ下に、司会者用のマイクがある。今回も、配布用紙に質問欄があり、 前もって回収された。提出者は少ないようだ。
第弐幕 マシン、トラブル
13:00少し過ぎると、一応イベントが始まった。司会は今回も「テスラ姉さん」。お馴染みの宣伝告知の後、平沢さんに登場しても らう前に、「論理空軍」のクリップ完全版を上映するはずだったが、プロジェクターがトラブってなかなか映像が出ない。「ライブに引き続き、色々とトラブル が・・・。」、復旧作業を待つ間、グッズの売り込みやら新譜の紹介やらをしてどうにか引っ張る司会。10分ほど経ってもダメで、結局、平沢さんを先に呼ん でしまうことになった。
平沢さんは、やっぱり今日も黒ずくめでおしゃれなカッコ。「この椅子はどうも据わりが悪いので、このように。」と立ってしまう平沢 さん。まず、司会から、例によって、『音楽産業廃棄物』の説明を求められ、いつも通りの受け答え。次に、「今回の新譜を作るにあたって何か真新しいことを したか?」との質問に、「真新しい事というか、そのつもりはないのだが、後になってみると、そうであることが多い。」と平沢さん。これまたいつも通り、イ ンターネットを通じることのみで作り上げたことを説明。公開ミックスダウン=結合チェンバーについては、「大変に重い(回線が)ものだった。後で調べてみ ると、一日に30万リロード(単位は忘れた;)のアクセスがあった。これをとあるアメリカの人が見ていたらしく、『電話回線の限界を超えた使い方』として 紹介されてしまった。」とのこと。そんなに殺到していたのか〜。
第参幕 タイに、行きタイ
「タイでのレコーディングなかったのか?」との問いへの答えが笑える話であった。「当初はスケジュール的にタイでのレコーディング は考慮していなかったが、ある時期非常に煮詰まって、『これはタイに行かねばダメだ』と言うことになり、タイ行きのスケジュールが組まれた。荷造りもした のだが、ぎりぎりになって私のパスポートの期限が切れていたことが分かった。(会場笑)実際にスケジュールまで組んだので、鎮西スパルタ技師等から色々怒 られたが、後になって、実は鎮西のパスポートも同様に期限切れしていたことが判明した(会場再び笑)。」。「効率を求めて、リフレッシュできるタイ・レ コーディングをしなかったしわ寄せは、おそらく来年に来るだろう。タイには明日にでも行きたい。」。大のタイ好きは健在のようだ。
「レコーディングの拠点となった筑波のスタジオについて教えてください」。「私は自分のスタジオとか機材を紹介するのが大嫌いであ る。だから、これはここだけでしか聞けない話になるだろう。筑波のスタジオは、新しく作った。ここに入れる機材を色々見積もっていたときは、業者に『この 機材はこういう使い方はしません』と言うことを何度も言われて、いい加減うるさかった。五つの小さなスタジオが集まったものとも言えるし、それをあわせて 一つのスタジオであると言うこともできる。あっちでレコーディング、こっちでミックスダウンと言った効率的な使い方ができるが、普通の人には非常に使いに くいモノだ。」。「現在は、ヴァーチャルライブの歌録りとベルセルク(ゲーム・サントラ)を平行してやっている。一方でオーケーが出ると、すぐにスイッチ を切り替えてもう一方の作業にかかるという状況だ。」。う〜む、今年の平沢さんは想像以上に忙しいようだ。本当に、少しは体をいたわってもらわない と・・・。このあと、グローバルトリビュートやなんかについての話題になった。「機会を逃してしまったので、現在時期を見計らっている。世界中の人に、ト リビュートして貰おうという計画。インド人が歌う、『美術館であった人だろ』等(会場笑)。」
第四幕 「はい」×2
「今回のライブで、何か目新しいことなどは?」。TAINACO-Eについて、いつも通りの説明をする平沢さん。「実写のためか、 ライブ中に妙に生々しくって気になってしょうがない(笑)。東京公演では、『論理空軍』に於いて、片方のスクリーンでクリップを、もう片方で、タイナコを 写そうと計画していたが、良くできたあのクリップでさえ、タイナコに喰われてしまうと思って断念した。」。「やがてはCGに戻ってTAINACO-3とな る予定だが、Eでここまでのものになってしまったので、相当のことをやらないと(バージョンアップに)ならない。」。3は一体どんなものになるのだろう か。
採用された参加者の質問の一つがきっかけで、ヒーリングミュージックの痛烈な批判(笑)へと発展した。「α波とか、1/fとか、リ ズムの揺らぎとか、そういう効果を狙って専門家のお墨付きを得たヒーリングミュージックというのは、そのほとんどがひどいものばかりである。音楽ほど好み の分かれるモノはないわけで、そういったヒーリングモノを聴いてα波を出す人もいれば、ハードロックやデス・テクノでα波を出す人もいる。それを、理にか なうからと言って画一的に作られた音楽が良い物であるはずがない。」おお!珍しい!平沢さんがムキになっている(笑)。極めつけは、「喜多郎なんか大嫌い だ(場内爆笑)。」。「いつかちゃんとしたヒーリングモノを作ってみたいと前々からずっと思っている。その時は、おそらく平沢進ではない、無名の新人とし てリリースするだろう。」。『旬』をもっと発展させた感じになるのかな?この話題の最中、司会の人は、冒頭のトラブルにより段取りがずれた関係でそれを調 整していたのか、あまり平沢さんの話を聞いておらず、平沢さんに、「〜ということです、わかりましたか?」的に同意を求められる事が何度かあったのだが、 ある時司会者が「はい」と答えたとき、バックで流れていた「DUSToidよ歩行は快適か?」の「はい」がシンクロしたことがあって、とてもおかしかっ た。すかさず、「彼(DUStoid〜のヒラサワ)もそう申しております」だって(笑)。
終幕 最後の、シツ問
最後の質問は、「音楽というものをどう考えているのか?」。「それは、『一体どういうつもりだ!?』ということですか?」と平沢さ ん(笑)。「いえ、平沢さんにとって音楽はどういうものかという質問です。」。「20年音楽をやってきて、音楽家には、とにかく演奏すること、コピーをす ること等の作業が好きな人と、何かを表現するとか、客とコミュニケーション取るためにそこにあった音楽を用いるタイプと二つあることを学習した。私は後者 である。」。これは以前どこかで言っていた。
イベント終了間際、クリップは結局見せられないということが告げられ、お詫びにポストカードを一人二枚渡すということになったのだ が、平沢さんが引っ込んだ後、大型テレビがガラガラ運ばれてきて、見れることになった。ここでじっくりとクリップを見ることができたのだが、例のレコード 会社は架空のもの?聞いたことのないトコだった。
退場後、店内で噂に聞いていたライブビデオのデモを見ることができた。東京公演二日目の模様で、「ローレシア」、「Ancient Sound」、「Heaven2000」、「DUSToidよ歩行は快適か?」が、「論理空軍」のクリップにサンドイッチされて、繰り返しかかっていた。 「Heaven2000」での、『平&こにダブルプレイ』もちゃんと写っていた。二階中央に設置されたカメラ一本による映像であることもあって、カメラ ワークがいまいちである。しかし、シンセは鍵盤の方までくっきり見えるアングルであった。ビデオが発売された暁には、是非ともデストロイの箇所をスロー再 生して研究したいものである。
行く前は半分めんどくさくなっていたこのイベントだったが、いつもと違う話が聞けて良かった。